先日、映画「アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち」
(原題 CAFE DE LOS MAESTROS)を京都で見てきました。
あらすじを簡単に説明しますと・・・
1940〜50年代に活躍したアルゼンチンを代表するタンゴのスターたちが、
2006年、アルバム収録のためにブエノスアイレスの古いスタジオに集結しました。
集まったのは60〜70年もの演奏歴を持ち、
なおかつ現役の、いわば国宝級とも言えるマエストロたち。
タンゴ、そしてブエノスアイレスの街の思い出を語りながら演奏を重ね、
世界3大劇場の一つ、コロン劇場でのステージに臨みます。
タンゴの偉大な巨匠たちが集まった「奇跡のステージ」をカメラは追います。
映画の端々に登場する街の景色、そしてずっと流れるタンゴ。
ブエノスアイレスの空気感を存分に味わえる映画です。
圧巻はコロン劇場のシーン。
カメラは客席から、そして舞台から、大劇場のステージを丹念に描写し、
まるで劇場の客席にいるかのような臨場感を味わわせてくれました。
演奏が終わったとき、
思わずスクリーンの中の観客と一緒に拍手したくなったほどです。
登場アーチストのうちの何人かは、その後この世を去り、
もう2度と見ることのできない、まさに「奇跡のステージ」となったそうです。
当然ながら皆さん、かなりのお年なのですが、
情熱的で誇り高く、一言で言えば「かっこいい!」人たちでした。
ところでこの日は、上映後にラテンアメリカ政治・政治史が専門の
京都女子大・松下洋教授のレクチャーがあり、興味深いお話を聞けました。
日本ではアルゼンチン音楽と言えばタンゴというイメージが強いですが、
タンゴが国を代表する音楽として認知されたのは、
実は割と最近のことなのだそうです。
それを象徴するのが、映画に登場したコロン劇場のステージ。
マエストロ達が活躍した40〜50年代には、
コロン劇場のステージに立つことは無く、
今回のコンサートが初めてだったそうです。
タンゴはもともと、移民労働者が集う場末の酒場から生まれてきた音楽。
そのため長い間、コロン劇場のような権威ある場で
演奏するものではないと考えられてきました。
コロン劇場でタンゴが演じられるようになったのは
比較的新しく、80年代からだそうです。
アルゼンチンにはかつて軍事政権の時代があり、
大勢の市民や芸術家が弾圧されるという悲しい出来事があったのですが、
軍政下におけるタンゴなど、アルゼンチン社会と音楽という観点から
いろいろなお話を聞かせていただきました。
国を代表する劇場にタンゴの巨匠達が集った、一夜限りの夢の舞台。
このコンサートの後、改修工事で閉鎖されていたコロン劇場は、
アルゼンチン建国200周年の今年5月に華々しく再オープンしました。
オープニングのときは街中がお祭りムードだったようです。
アルゼンチン文化に興味をお持ちの方には、ぜひお勧めの映画です。


2011年10月1日 10:45 am
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